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Up(細胞性粘菌の培養と観察)

細胞性粘菌の長期保存

シリカゲルストック | 凍結乾燥 | アメーバ状態での保存

シリカゲルストック

特別な装置無しに手軽にできる。胞子の状態が良いと長期間保存でき、20 年以上経って今でも生きているものもある。

準備

ストックの作成

  1. 新しく作った細胞性粘菌のストックプレート(a)をしばらく冷蔵庫に入れて冷やす(b)
  2. 滅菌した白金耳で子実体の胞子塊を集め、少量のドライミルク溶液にとる(c)。何度も繰り返してできるだけたくさんの胞子を集める。
  3. このドライミルク溶液を氷で冷やし、冷やしておいたバイアル瓶中のシリカゲルに滴下する(d)
  4. 蓋をしたあとバイアル瓶を振って中身を均一にし、乾燥剤を入れた容器に入れて冷蔵保存する。


ストックの作成 ―― 簡便法

  1. 滅菌した白金耳で子実体を掻き集め、バイアル瓶中のシリカゲルに突っ込んで掻き回す。シリカゲル全体がうっすらと胞子の色に染まるくらいまでこれを繰り返す。
  2. 蓋をしたあとバイアル瓶を振って中身を均一にし、乾燥剤を入れた容器に入れて冷蔵保存する。


戻し方

ニ員培養の場合、バクテリアを拡げたプレートにシリカゲル粒子を適当にばら撒く。あるいはバクテリアの懸濁液にシリカゲルを数粒入れ、良く撹拌したあとこのバクテリア懸濁液を栄養培地に拡げる(普通この方が早く細胞を回収できる)。単独培養なら、少量のシリカゲルの粒を直接培地に流し込む。状態の良いストックなら3日程度で細胞の増殖が確認できるが、1週間以上かかることもある。子実体の形態を確認したら、新しい栄養培地でストックプレートを作る。


凍結乾燥

凍結乾燥は、長期間保存の最も確実な方法とされているが、そのための設備が要る。方法は途中までシリカゲルの場合とほぼ同様で、濃いめのドライミルクに懸濁した胞子を凍結乾燥用のガラスチューブに少量入れたものを急速凍結し、真空に引いて十分乾燥させたのち真空ポンプから遮断してガラスを封じる。真空度のチェックをして、冷蔵保存。


アメーバ状態での保存

胞子を作らない変異株は上記の方法で保存できないが、動物の培養細胞と同様の方法で細胞性粘菌のアメーバ状の細胞も保存できる。少なくとも -80 C まで冷えるフリーザが必要。液体窒素が使えればなお良い。 以下には単独培養の細胞のストックを作る方法と戻し方の例を示す。ニ員培養の場合は、バクテリアの色が薄くなり始めたあたりを白金耳で掻き採って保護剤に懸濁し、あとは同様にすれば良い。

準備

ストックの作成

  1. 培養液 10 mL を滅菌した遠心管に入れ、1500 rpm、1分遠心して細胞を沈澱させる。
  2. 沈澱した細胞に 0.5〜1.0 mL の新鮮な培地を加えて撹拌する。細胞密度は約 108 cells/mL。
  3. 血清 0.5 mL をエッペンドルフチューブにとり、DMSO 111 μL をこれに加えて撹拌する。
  4. これに細胞懸濁液を 0.5 mL 加え、静かに混ぜ合わせる。
  5. エッペンドルフチューブに 100〜200 μL ずつ分注する。
  6. これを細胞凍結用の容器(BICELL など(d))に入れ、-80 C の冷凍庫に数時間以上置く。
  7. チューブをラックなどに移し、-80 C で保存する(e)


戻し方

  1. フリーザからチューブを出し、室温に置く。
  2. 時々静かに揺り動かしてほとんど解けたら、冷やした新鮮な培地を 1 mL くらいまで足し、わずかに撹拌し(一度チューブを逆さまにする程度)、小型遠心機で 4000 rpm、2秒ほど遠心して細胞をゆるく沈澱させる。
  3. 上澄みを注意深く吸引し、少量の培地に浮遊させて新鮮な液体培地の入ったシャーレに加える。 細胞数はあまり多くない方が良い。



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